先日、弊社会員様(高校バスケ部のSさん)からこんなご質問を頂きました。
”部活でパスを受ける際、キャッチしようとしたら左手の人差し指にボールが直撃し、突き指してしまいました。
コーチがすぐに指を引っ張てくれ、冷やすようにアドバイスをしてくれたので、コールドスプレーをした後に冷シップを張りました。
応急処置として問題無かったでしょうか?”
結論から言うと、この応急処置は間違った応急処置をしてしまっています…
正しい応急処置だと思われた方、注意して下さいね。
では、この応急処置のどこが良くなかったのでしょうか?
この記事の目次
そもそも突き指とは?
突き指は日常でよく見る外傷の1つで、野球やバスケ、バレーボールなどの球技で多く見られる怪我です。
ボールなどがぶつかって指先に衝撃を受け、第1関節や第2関節の靭帯などが損傷して関節が腫れてしまい、痛みで指を曲げられなくなったり伸ばせなくなってしまう症状のことを言います。
※統計的には、中指、人差指、小指、薬指の順番で起こる確率が高く、親指は稀であまり見られません。
指にぶつかる衝撃が強い時は重症になることもあり、骨折になってしまって指先が曲がったままになってしまい、指が伸ばせなくなってしまうこともあります。
突き指の間違った応急処置
先ほどのSさんの応急処置の話に戻りましょう。
Sさんが行った応急処置は、
・指を引っ張った
・コールドスプレーで冷やした後に冷シップを張った
ということでしたね。
そしてこの応急処置は、適切な処置ではなかったとお話しました。
では、何が適切ではなかったのか、次で確認していきたいと思います。
指を引っ張るのは、煙草を吸うのと一緒
突き指で間違った応急処置として多いのが、実は指を引っ張ってしまう処置です。
自分で引っ張ったり、他人が引っ張ったりする光景をよく見かけますが、皆さんも学生時代に一度は経験したことがあるのではないでしょうか。
しかし、痛めてしまった患部を引っ張ってしまうのは、絶対にしてはいけません。
それは煙草を吸うことと一緒だと考えて下さい。(害はあっても益になることは1つも無いので!)
ただでさえ最初の衝撃で靭帯などが傷んでしまっている状態なのに、患部を引っ張ってしまうことにより、傷みがかった他の組織までもが完全に傷んでしまうことになってしまうんです。
患部を引っ張ることは二次障害に繋がり、治りが遅くなって競技の復帰に遅れる原因になってしまいます。
実は全然冷やせていないアイシング
突き指を問わず、怪我をしたらスプレーやシップなどでアイシングでをする方が多いですが、これは注意が必要です。
一見、正しい処置のように思われるかもしれませんが、実はほとんどアイシングできていません。
コールドスプレーにしろ冷シップにしろ、冷たく感じるのでアイシングできている感じがするのですが、実際はどちらも表面部分しか冷やせていないんですね。(冷シップに関しては、皮膚の表面温度を約2度下げるだけの効果です)
ですので、アイシングできている気になってしまっているだけであって、本来アイシングしたい患部の応急処置になっていないんです。
熱を持っている患部(傷んでいる靭帯や腱)をしっかり応急処置するためにも、適切なアイシングをする必要があります。
正しい応急処置とは?
では、突き指の正しい応急処置はどういった処置なのでしょうか。
これからご紹介するのは突き指だけではなく、怪我全般で共通して行うべき応急処置になります。
その応急処置がRICE(ライス)になるのですが、一度は名前を聞いたことがあるかもしれませんね。
RICEとは、以下の4つの英単語の頭文字を取ったものになります。
・Rest(安静)
・Icing(冷却)
・Compression(圧迫)
・Elevation(挙上)
Rest(安静)
患部の腫脹(はれ)、そして血管の損傷や神経の損傷を防ぐことが目的です。
私達の身体は、怪我をしたその直後から患部の内出血や、腫脹から回復しようする力が働きます。
しかし、安静にしないで患部を動かしていると、血液の流れが良くなって患部に流れ込むため、腫れが引かずに炎症も治まらないので治癒を遅らせてしまいます。
筋肉や関節の動きを抑えることによって内出血も抑えることができますので、怪我をしてしまった際は無理に動かそうとせず、可能な限り安静にしてまずは早期回復に備えることを心がけて下さい。
Icing(冷却)
痛みを軽減させて内出血や腫脹、炎症を抑えることが目的になります。
身近にあるもので適切なアイシングをするには、氷が一番もってこいなんですね。
なぜなら摂氏0度の氷は、融けて水になる時に周囲の熱を奪い取る能力が高く、アイシングの効率に優れているからです。
そのため、他の材料と比べても患部の表面だけではなく、深部までアイシングすることができます。
ビニール袋に氷と少量の水を入れることにより、患部との接触面積を大きくできるので、しっかりアイシングすることができますよ。
患部をアイシングする際の目安ですが、4段階の感覚の変化(※)があるので、4段階目の感覚がなくなるところまで来たら終了の目安です。
※冷たくてジーンとした痛みを感じる→ポッと温かさを感じる→針で刺されるような痛みを感じる→感覚が無くなる
Compression(圧迫)
患部の内出血や腫脹を防ぐことが目的になります。
圧迫時には、主に伸縮性のある包帯などを使用しますが、圧迫の加え過ぎは逆効果になってしまうので注意が必要です。
圧迫の強さの目安としては、指先が紫色や蒼白であったり痺れや痛みを伴う場合は強過ぎます。
もし、そういった症状があるようでしたら圧迫を緩めるようにして下さい。
圧迫してしばらくの間は、血行に十分気をつけましょう。
Elevation(挙上)
患部を自分の心臓の位置よりも高い位置に持ち上げることで重力が働き、腫脹の軽減を図ることが目的です。
患部を挙上することで出血量が減り、痛みも軽減されます。
クッションやまくら、椅子などの身近なにあるもので構わないので、手頃な高さのものを探して患部を乗せておきましょう。
まとめ
今回は、突き指の間違った応急処置と正しい応急処置に関してお話しましたが、患部を引っ張ることは害はあっても益が無いですので、絶対にしないで下さいね。
そして突き指を問わず、怪我の正しい応急処置はRICEですので、患部を安静にしてアイシングし、患部を圧迫して心臓よりも高い位置に挙上するようにしましょう。
アイシングに関しては、コールドスプレーや冷シップでは表面の皮膚しか冷やせないので、しっかり深部までアイシングできるよう、ビニール袋に氷と少量の水を入れて接触面積を大きくして下さい。
最後になりますが、怪我をしたら素早く正しい応急処置ができるかどうかが、その後の競技パフォーマンス、そして競技への早期復帰を左右します。
皆さんは正しい応急処置をもうできますよね?
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